2025/10/01 コラム
情報流通プラットフォーム対処法
情報流通プラットフォーム対処法の目的
2024年、プロバイダ責任制限法が改正され、名称も情報流通プラットフォーム対処法に改められ、2025年4月1日から施行されました。
プラットフォームとは、インターネットを通じて、利用者同士または利用者と事業者の間で、情報・サービス・商品などのやり取りを可能にするための、デジタル上の基盤や仕組みのことです。
情報流通プラットフォーム対処法が制定されたのは、ソーシャルメディア(SNS)や電子掲示板などのインターネット上で問題となっている誹謗中傷や権利侵害への対応を強化するためです。
利用者数が多いSNSや電子掲示板などを運用する事業者を、総務大臣が大規模プラットフォーム事業者に指定し、誹謗中傷等の被害者がスムーズに削除申請できるための措置などを義務付けています。
大規模プラットフォーム事業者
大規模プラットフォーム事業者の指定
大規模プラットフォーム事業者として指定されるのは、平均月間アクティブユーザー数が1000万以上、または、平均月間延べ発信者数が200万以上であるといった大規模な事業者です。
指定されている事業者・サービスとしては、グーグル(YouTube)、メタ・プラットフォームズ(Facebook、Instagram)、エックス・コープ(X)、株式会社湘南西武ホーム(爆サイ.com)などがあります。
削除申出窓口の公表
大規模プラットフォーム事業者は、誹謗中傷などの被害を受けた人が削除請求を申し出るための方法を定めたうえで、その方法を公表しなければなりません。
申出はオンライン上で行えるようにし、事業者が申出を受け付けた日時が、申出をした人に分かるようになっている必要があります。
申出フォームについては、トップページから少ないクリック数でアクセスできるなど、利用者が見つけやすいことが求められます。また、文字数制限のない記入欄が設けられ、証拠の添付も可能であるなど、十分な情報提供ができる構成となっている必要があります。
侵害情報に関する調査の実施
大規模プラットフォーム事業者は、被侵害者から削除請求に関する申し出を受けた場合、権利が不当に侵害されているかどうかについて、遅滞なく必要な調査を行わなければなりません。
侵害情報調査専門員の選任
権利侵害に関する調査について、専門的な知識や経験が求められるケースでも適正に調査を実施できるよう、大規模プラットフォーム事業者は、侵害情報調査専門員を選任する必要があります。
侵害情報調査専門員は、削除等を実施する職員が判断に迷った際に職員からの相談を受けて、より専門的な調査を行います。弁護士等の法律専門家や、日本の風俗・社会問題に十分な知識経験を有する人物から選ばれます。
削除の申出者への通知
削除の申出があった場合、大規模プラットフォーム事業者は調査結果に基づき侵害情報の削除をするかどうかについて判断し、申出を受けた日から7日以内に、申出者に対し、削除を実施した場合はその旨、削除を行わなかった場合はその理由を含めて通知しなければなりません。
ただし、大規模プラットフォーム事業者は、調査のため侵害情報の発信者の意見を聴くこととしたときや、調査を侵害情報調査専門員に行わせることとしたときなどは、申出を受けた日から7日以内に、その旨を申出者に通知すれば足ります。この場合は、調査結果に基づき削除するかどうかを判断した後遅滞なく、結果等を申出者に通知します。
削除の実施に関する基準の公表
大規模プラットフォーム事業者が削除の措置を講じることができるのは、原則、自ら策定してあらかじめ公表していた削除基準に該当する場合に限られます。
どのような投稿が削除の対象となるのかを利用者があらかじめ分かるようすることで、プラットフォーム事業者の恣意的な運用や不透明な表現規制を防ぎ、利用者が安心してサービスを利用できる環境を整えるためです。
ただし、削除の措置を講じる法令上の義務がある場合などは、削除基準に該当していなくても削除することができます。
削除措置を実施した場合の発信者への通知
大規模プラットフォーム事業者が削除の措置を講じた場合、削除された情報の発信者に対し、措置を講じた旨およびその理由を遅滞なく通知しなければなりません。発信者の連絡先が分からない時などは、削除された投稿が存在した位置に、削除したことと理由を掲載するなどの措置を講じます。
プラットフォーム事業者が策定した削除基準にもとづいて削除した場合は、理由の中で、削除措置と基準との関係を明らかにする必要があります。
削除実施状況等の公表
大規模プラットフォーム事業者は、毎年1回、削除の実施状況等を公表しなければなりません。
公表する事項は、削除請求の申出の受付状況、削除請求の申出者に対する通知の実施状況、削除措置を講じた場合の発信者に対する通知の実施状況、各措置に関する自己評価などです。
公表によって、プラットフォーム事業者の対応状況が社会全体で把握でき、透明性が確保されます。
最後に
今回の法改正により、大規模なSNSや電子掲示板を運用している事業者には、違法・有害情報に対する迅速かつ透明性のある削除対応が義務付けられました。
もっとも、法改正によってインターネット上での権利侵害についての問題が全て解決するわけではありません。
インターネット問題についてお困りの際には、ひびき総合法律事務所に是非ご相談ください。