2026/06/04 コラム
家族法改正と共同親権・養育費
離婚後の親権・養育費・財産分与のルールが変わりました
2026年4月1日、離婚や子どもの養育に関する民法のルールが大きく変わりました。
「共同親権」がニュースで取り上げられることが多いですが、今回の改正はそれだけではありません。子どもの養育費、財産分与、面会交流など、離婚やその後の家族関係に関わるルール全体が見直されています。
本記事では、改正のポイントを5つに絞ってわかりやすく解説します。
ポイント1 離婚後の親権に「共同親権」という選択肢
これまでの日本の制度では、離婚後の親権は父か母のどちらか一方しか持てませんでした。改正後は、父母の双方が親権者となる「共同親権」も選べるようになります。
ただし、注意していただきたいのは、共同親権が原則になったわけではないという点です。あくまで「選択肢が増えた」のであって、これまでどおりの単独親権を選ぶこともできます。離婚する父母の話し合いで決め、合意できないときは家庭裁判所が「子どもの利益」を基準に判断します。
DV・虐待のおそれがある場合や、父母の協力が困難と認められる場合などには、単独親権とされることがあります。共同親権が適切かどうかは、父母が子どものために必要な協力をできるかどうかも踏まえて判断されることになります。
なお、共同親権となった場合でも、すべてを毎回相手と相談しなければならないわけではありません。日常的な世話や、子どもの利益のため急を要する場面では、一方の親が単独で判断できる場合があります。
すでに離婚されている方も、施行日以降は、家庭裁判所の手続を通じて単独親権から共同親権への変更を申し立てることができます。
ポイント2 取り決めがなくても請求できる「法定養育費」
離婚するときに養育費の金額を取り決めずに別れてしまうケースは、決して珍しくありません。しかし、後から請求しようとすると話し合いが難航したり、相手と連絡が取れなくなっていたりすることがしばしばあります。
改正法は、こうした事態に対処するため、取り決めがなくても、子どもを主に養育している親は、もう一方の親に対して一定額の養育費を法律上請求できるという新しい制度を設けました。これが「法定養育費」です。
金額は、法務省令により子ども1人あたり月額2万円と定められました。子どもが2人なら月4万円、3人なら月6万円となります。
ただし、この制度は養育費の標準額や最低額を定めるものではなく、正式な養育費の取り決めがされるまでの暫定的・補充的な制度です。実際の養育に必要な費用は2万円では足りないことが多いので、最終的にはきちんと話し合いや家庭裁判所の手続で適正な金額を取り決める必要があります。
もっとも、支払う側が支払能力を欠く場合や、支払いによって生活が著しく窮迫する場合には、全部または一部について支払いが認められないことがあります。
なお、この制度は、2026年4月1日以降に離婚した場合に適用されます。
ポイント3 養育費の差押えがしやすくなる
これまで、養育費が未払いになったときに相手の給与や預金を差し押さえるためには、公正証書や調停調書といった「債務名義」と呼ばれる正式な書面が必要でした。
改正により、養育費には「先取特権」と呼ばれる優先権が認められました。
これにより、父母間で書面により養育費の取り決めをしている場合には、債務名義がなくても差押えの申立てができるようになります。
先取特権で保護される金額には上限があり(子ども1人あたり月8万円まで)、それを超える部分には従来どおり債務名義が必要です。
ただし、先取特権があるからといって公正証書を作る意味がなくなったわけではありません。
子ども1人あたり月8万円を超える養育費について差押えができるようにしておきたいときや、財産分与・慰謝料も含めて強制執行に備えたいときは、これまでどおり公正証書の作成をおすすめします。
ポイント4 財産分与の請求期間が「2年」から「5年」に
これまで、離婚に伴う財産分与の請求は、離婚から2年以内にしなければなりませんでした。
2年は必ずしも長い期間ではなく、離婚後の生活の立て直しや資料の整理に時間がかかることもあります。
改正により、この請求期間は5年に延長されました。離婚後しばらくしてから財産関係を整理する場合にも、対応を検討しやすくなります。
ただし、この5年への延長は、2026年4月1日以降に離婚した方に適用されます。2026年3月31日以前に離婚した方については、従前どおり離婚後2年の期間となります。
また、家庭裁判所での財産分与の手続において、考慮すべき要素(婚姻期間、双方の貢献度、生活水準など)が条文上明確化されたほか、財産に関する資料の提出を求める手続も整備されました。
ポイント5 別居中でも面会交流のルールを定められる
これまでも、夫婦が別居しているものの離婚はしていない段階で、家庭裁判所が面会交流について判断することはありました。しかし、民法には明文規定がなく、法律上の位置づけが分かりにくい面がありました。
改正により、婚姻中の別居期間中でも、面会交流(親子交流)について定めることができることが明確になりました。離婚に至る前の段階から、子どもと離れて暮らす親との関係を法的に整理しやすくなったといえます。
もっとも、面会交流は子どもの利益を最優先に考えるものです。DVや虐待などの事情がある場合には、子どもの安全・安心が確保されることが前提となり、状況によっては交流が制限されることもあります。
まとめ
今回の改正は、離婚後の子どもの養育について、父母双方の関与や養育費の確保を重視する方向への見直しを含んでいます。
一方で、すべてのご家庭に共同親権が向いているわけではありませんし、法定養育費の額も決して十分とはいえません。制度の内容を理解したうえで、ご自身の状況に応じて考えることが大切です。
「自分の場合はどう考えればいいのか」「改正後の制度が自分に関係するのか知りたい」といったご相談がありましたら、お気軽にひびき総合法律事務所までお問い合わせください。